経営者へ10の質問

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はじめに
 
中小企業にとって会計の役割はともすれば税務署向けの申告書を作成するために必要でその細かい内容は税理士・公認会計士に任せておけばいいとなりがちです。ですが、決算書からは経営のあり様が見えてくるのも事実です。そこで、10の質問を用意し、決算書から経営をチェックしていたくためのチェックポイントを解説してみました。


中小企業の経営者の方へ10の質問
質問1:今年度の利益の増加・減少の原因を説明できますか。
質問2:入金予定日より3ヶ月以上経過している売掛金はありませんか。
質問3:仮払金、未収入金、預り金は何時どんな理由で計上されたものか明確ですか。
質問4:在庫金額を正常在庫、滞留在庫、不良在庫それぞれ区分別に把握していますか。質問5:資金繰り表を作成し、3ヶ月先までの入金予定と出金予定がおおよそわかっていますか。
質問6:従業員が不正や横領をできない仕組みにしていますか。
質問7:働きと給与は見合っていると考えている従業員が少なくても半分以上いると思いますか。
質問8:営業マン、製造マンの業務遂行を支援するための仕組みはありますか。
質問9:貸借対照表に計上されている資産を時価で評価したら、どれくらいの金額になるか知っていますか。
質問10:万が一、経営者にもしものことがあった場合、従業員を路頭に迷わせないためにどんな手を打ってありますか。


質問1.今年度の利益の増加・減少の原因を説明できますか。
(1)会社全体の利益の増減を知るには次の項目を金額の裏付けをもって把握する必要があります。
 ・月別、得意先別、商品(群)別粗利益の推移
 ・月別、得意先別、商品(群)別粗利益が大きく変化している場合の原因
 ・今年度の受注の特異な変化の把握
 ・今年度の経費の主な増加・減少の理由

(2)上の4つの項目について内容はもちろんわかっているが、金額まではわからないというのであれば社内のルール、業務のやり方、報告の仕方、経営会議の進め方などに改善の余地があるといえます。


質問2:入金予定日より3ヶ月以上経過している売掛金はありませんか。
現金商売でなければ売掛金の入金があって初めて取引が完了することになります。もし、得意先に納品し売上がたったことで安心して、売掛金の入金が遅れていることを気にかけていないとしたら、それは売上代金を「ある時払いの催促なし」で得意先にお金を貸していることと同じです。
 売掛金の入金時期は資金繰りにも大きく影響します。売掛金の入金時期をしっかり把握しておけば、必要な資金の額もわかりますので、余分に資金借入を行わなくて済みます。 売掛金の回収を怠っていますと、得意先から「そちらから1年以上、請求がなかったから支払いません」と言われかねません。1年以上、売掛金を未請求でいますと法律上、時効となってしまいますので法的にも対抗できないことになります。


質問3:仮払金、未収入金、預り金は何時どんな理由で計上されたものか明確ですか。
 仮払金などの勘定には、日常はあまり起こらない取引や、ちょっと説明しにくいお金の支払・受取を記録するのに使われることが少なくありません。
 そして、往々にして、決算を迎えても処理に困り、長期間に渡って残高が残ってしまうことも間々あります。
 このような仮払金などの勘定残高の金額を多くなってきますと、経理も次第に不透明になり、税務調査で痛い目にあう結果となってしまいます。
 そのため、交通費などの仮払など日常的に発生する仮払金を除き、それらの勘定残高が大きくなっているようでしたら、早めに内容を調べ、残高を減らすようにすべきです。金額は大きくないですが、辞めてしまった社員に対する仮払金が残っていて、いまさら回収できないというのもよくある話です。


質問4:在庫金額を正常在庫、滞留在庫、不良在庫それぞれ区分別に把握していますか。
 
在庫は物が売れない時代になりますと、増加しやすくなります。そして、現在のように不況が長期化しますと、売れない商品・製品が在庫が積み重なってきます。
 在庫が増えるということは保管費用がかかるだけではなく、製造までに要した資金がそこで止まってしまい、現金として回収できないことを意味します。
 そのため、在庫も売れている在庫と売れる見込みがない在庫とに区分し、 売れる見込みがない在庫については廃棄処理することも経理の立場からは必要なことになります。何故なら、廃棄損を計上すればそれだけ費用が多くなり、したがって利益が少なくなり、税金が少なくなるからです。言い方を換えますと、廃棄処分することはその商品なりを帳簿価額の42%で売ったことと同じ結果になるということです。
 製造担当の気持ちからすれば汗水たらして、作り上げた製品を廃棄するというのは忍びないと感じられると思います。ですが、これだけお金が回りにくい世の中になりますと、例えば「製造後2年を経過した製品は廃棄処理する」というルールを作成することが会社全体の立場からは必要になると思います。
 

問5:資金繰り表を作成し、3ヶ月先までの入金予定と出金予定がおおよそわかっていますか。
 企業にとって資金は人間の血液と同じで、一瞬でも回らないと活動がストップしてしまいます。ストップしないまでも経営者が資金繰りで頭が一杯ではお客様の方に十分に目がいかなくなってしまいます。
 そのためには、資金繰り表を作成し、3ヶ月先までの入金予定と出金予定を記載し、現状のままでは何時、どれだけの資金不足が起きるのかを把握します。そして、資金不足を起こさないためにはどの出費を削ればいいのか、あの支払を1ヶ月先に延ばせないかなどを検討し、その結果、有効な手だてが打てないことがはっきりとしたならば初めて借入を検討すればいいのです。
 資金繰り表を作成することは、計画を立てて経営を行うことの第一歩となります。明日の売上などわからないのだから、計画など立てようがないという経営者の方もおられます。ですが、計画とは経営者の思いを数字で表したものですから、何の思いも表に出さず、成り行き任せで「4月はこうだった、5月はこうだった」と嘆くよりは、「6月はこうする、7月はこうする」と計画を立てて、もし計画と実績が異なっていたら「どうしてこうなったのだろう」と考える方がはるかに強いリーダーシップを経営者が発揮でき、業績も必ずよくなるはずです。
 そうした計画経営を行うためにも資金繰りの作成から始められたらいかがでしょうか。


質問6:従業員が不正や横領をできない仕組みにしていますか。
 ときおり、テレビで社員の横領事件が報じられています。その多くのものは驚くべきことに何年にも渡って横領が続けられていたというものです。
 おそらく横領を起こした者は会社の管理体制では発見されないという自信があったのでしょう。事実、そのため、何年もの間犯罪が露見しなかったといえます。
 あるとき、社員に何千万円も横領された会社の経営者がその先輩に「奴のおかげで倒産してしまうかもしれない」と愚痴を言ったそうです。そのとき、その先輩は次の言葉を返しました。「馬鹿者、お前は経営者としてその人を育てるどころか、犯罪者を作り上げたんだぞ。お前のせいでまっとうな人生を送れる人間を犯罪者としてしまって、何の反省もしていないのか」。
 会社では社員個人が生涯手にする金額以上のお金を扱うことを考えますと、帳簿と現金残高・銀行通帳との照合など様々なチェックを行い、人間の弱みを引き出さない仕組み作りをすることは極めて重要なことです。


質問7:働きと給与は見合っていると考えている従業員が少なくても半分以上いると思いますか。
 顧客満足という言葉は一般的になりましたが、顧客満足の前段階として従業員満足という考え方があります。
 従業員満足は会社が儲かって、いい給料を出してやれば得られるものではなく、会社の目指す方向と個々の従業員の価値観とが一致し、日々その実現に向かって着実に歩を進めていると感じられることにあるといえます。
 ただ、会社での仕事に生きがいを見いだせなかったり、給与の決め方に公平を欠くようなものであれば従業員は自分の給与に対して不満を持つようになります。
 給与の決め方はなかなか難しいものがあります。ですが、世の中の景気、会社の業績、従業員の年齢などを加味しながら、従業員から公平性と納得性を得られるものにしなければ、会社がつくり出す製品やサービスの品質が低下していくのは確かなことです。


質問8:営業マン、製造マンの業務遂行を支援するための仕組みはありますか。
 経営者は強いリーダーシップを発揮し、社員に対して社員の能力より少し高めの目標を与えて会社への貢献を引き出さなくてはなりません。それでなければ会社は成長しませんし、社員も成長することができません。
 といって、社員を叱咤激励するだけでは社員も疲れ果てて、一生懸命に働いても思うような成果はでにくくなります。話は換わりますが、ある調査によりますと、営業マンの労働時間のうち、お客様とお会いして商談を行っている時間は全体の30%にも満たないということです。つまり、社内で様々な報告書を作成したり、いくつも会議に出席したり、伝票や日報処理で労働時間の半分以上を費やしているという訳です。
 営業マンでいいますと、こうした事務処理時間をいかに減らし、お客様と会う時間を多くして上げるよう、会社の業務ルールや業務処理の仕方を変える、手頃なパソコンソフトを導入し、一度記入したことは二度記入しないように無駄な作業はさせないということも、いわば社員を支援するということも経営者にとって重要な役割の一つです。


質問9:貸借対照表に計上されている資産を時価で評価したら、どれくらいの金額になるか知っていますか。
 現在、大企業では時価会計ということで貸借対照表に記載されている資産を時価で評価しようという流れになっています。
 この時価評価の流れは中小企業にも関係してきます。それは何かといいますと、金融機関は企業に融資をすれば決算期ごとに決算書の提出を求めてきます。決算書には附属明細書といって土地であればどこそこの土地を持っているかが記載されています。そのためその資料をもとに、会社が保有している土地の時価がわかります。同じように附属明細書を見れば有価証券の時価、ゴルフ会員権の時価がわかります。要するに金融機関は会社の決算書から資産の時価を計算することができるのです。そして、資産の時価を把握したならば、次はそれを借入金の金額と比較します。その結果、借入金の方が多いとなれば、万が一の時、金融機関は貸付金を回収できないと判断し、新たな貸付にも応じないということになるのです。
 以上のことを考えますと、経営者の方に御願いするのはまず自社の資産を時価評価してみてください。そして、負債の方が大幅に資産価額を上回っているのなら、経営計画書や業務改善計画書などを作成して、金融機関に対して「こういう手段により、このレベルまで業績を回復させる」と説明して下さいということです。


質問10:万が一、経営者にもしものことがあった場合、従業員を路頭に迷わせないためにどんな手を打ってありますか。
 中小企業は経営者の手腕によっているところが大きいのが通常です。そのため、縁起でもないかもしれませんが、経営者が病気になったり、事故にあったりしたときのことも考えておくべきでしょう。
 リーダーシップの面からは次期社長候補を早くからはっきりさせておく、下の降ろせるものであれば意思決定の権限を部長レベルに委譲するなどの方法があります。また、資金的な面からは経営者保険に加入し、社内の混乱から来る業績の悪化に備えるという方法などがあります。
 大事なことは会社にとって何が重要なリスクなのかを普段から考え、でき得るならばそれに対する準備をしておくことです。会社は得意先・仕入先・金融機関の倒産、優秀な社員の退職、品質管理など数え切れないリスクに囲まれています。あの得意先は倒産しそうだから別の得意先に売り込もうというようにリスクは感じても、それに対する対処や準備は難しいものもありますが、普段からリスクについて考え、心の準備をしておくのは経営者にとって重要なことです。